みずほ銀行で相次いだシステム障害。
2/28のシステム障害では、ATMが停止してキャッシュカードが吸い込まれたまま戻ってこなくて、銀行に立ち往生する人々が多数出るなど、混乱をきたしました。
この障害は、1年以上記帳がない定期預金の口座を通帳を発行しないデジタル口座へ一括して切り替える処理の作業中に、インデックスファイルのサイズが確保していたメモリー容量を超過したために発生しました。
これらの相次ぐシステム障害を受けて、みずほファイナンシャルグループは、2021年6月15日に、役員11人の役員報酬の減額などの処分を公表しました。
1. みずほ銀行におけるシステム障害の原因について
システム障害特別調査委員会の調査報告書によると、一連のシステム障害の原因として下記を指摘しています。
(1)危機事象に対応する組織力にかかる課題
(2)IT システム統制力にかかる課題
(3)顧客目線にかかる課題
の 3 点が存在し、さらにその根底には
(4)それらが容易に改善されない体質ないし企業風土
があるものと指摘しています。
体質・企業風土、一番難しい部分を指摘されています。
2. システム障害発生の根底にある企業風土
みずほ銀行のシステム障害の根底として指摘された企業風土。
報告書では、本障害を通して、システム障害などの有事において、自らの持ち場を超えた積極的・自発的な行動によって、問題を抑止・解決するという姿勢が弱い場面がしばしば見受けられていると指摘されています。
また、障害の内容・顧客への影響の全容が完全に明確ではない時点において、リスクがあるものとして、発言し行動することを控えるような状況も観察されています。
例えば、2/28の障害報告メールで、『A2 ランク懸念』として、『行外に軽微かつ限定的な影響を及ぼす障害』の懸念のみが記載され、ATMのエラー件数など具体的な情報が欠落していた事実など。
そして、役職員がこのような積極的・自発的姿勢が欠ける要因として、下記が指摘されています。
- 積極的に声を上げることで、かえって責任問題となるリスクをとるよりも、自らの持ち場でやれることはやっていたといえるための行動をとる方が、組織内の行動として合理的な選択になってしまう企業風土
- たとえ、間違っていたとしても改善の声を上げ、組織の持ち場を超えて意見を述べ、積極的に連携をするなどの行動が高く評価されず、間違えがあれば大きく評価を下げるような企業風土
3. 他人事ではない減点主義の企業風土
この指摘された企業風土を読みながら、ギクッとしました。
あれ、私が勤めていた会社のこと?
普通に考えて良いと思ったことであっても、組織の役割・枠を超えたような内容だとなかなか前に進まないということです。
「失敗したら誰が責任を取るんだ」、「誰がこれをOKしたんだ」とか、「勝手に進めるな」となります。
クレームされないように、いろんな部署を巻き込み、事前に会議三昧になると、進むのが異様に遅くなり、またいろんな意見が出すぎて収拾がつかなくなることもしばしば。
新人の時には、なぜ上司は保守的で自分の組織のことしかやらないのだろうと思ったりもしたのですが、だんだんサラリーマン生活が長くなるにつれ、そうなっちゃうのは仕方ないと思えるようになってくるのです。
減点主義
多少の失敗をしても、会社をより良くしていくという熱気はなく、縦割り組織の役割を失敗せずに果たすことが評価される、そして何か提案を通すためには、「社内政治」や「根回し」が必要とされるのです。
「会社員であり続ける」、「自分が担当の間、問題を起こさずに仕事を進める」 という現状維持志向の強いプレイヤーの集まりになりがちなのです。
新しいチャレンジや改革を提案し、実行した人がもし、少しでもミスをしようものなら、「だからオレは反対したんだ」とつるし上げ、リスクをとって何かを決断・実践した人間を、なんのリスクも取らず、何ひとつ決めていない外野が「軽率だ」「やり方がまずい」とジャッジだけを下す…
それでも、チャレンジした人が、昇給・昇進して、多額の給料を貰えるようになればまだ救いがあるのですが、年功序列でさほど差もつかず、どちらかというと、出る杭は打たれてしまい、出世が頭打ちになり、辞めて外の世界に出ていくケースすらあります。
4. 再発防止に向けて
みずほフィナンシャルグループが、再発防止に向けた取り組みをホームページで公開しています。
「企業風土」を変えるというのは、なかなか何かアクションをしたらすぐ変わるものではないので、一朝一夕で改善するようなものではないでしょう。
しかしながら、この企業風土についても問題は、多かれ少なかれ、日本企業の多くが抱えている問題で、国際競争力を損なっている理由の一つだと思います。
サラリーマンにとっては、この企業風土による閉塞感もFIREが流行している一因かもしれません。
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